財務省大阪造幣局

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泉布観

 

この建物は大阪に現存するもっとも古い洋館建築です。現在の造幣局の北側に次に紹介する大阪市ユースアートギャラリーと同じ敷地内にあります。建物内部は年に一度だけ公開されています。

この建物の設計を担当したのは、この造幣局で使う機械の輸入ブローカーであったイギリス人商人トーマス.グラバー(長崎県の有名観光地のひとつグラバー邸は彼の邸宅です)が仲介した「お雇い外国人」アイルランド出身のイギリス人技師 T.Jウォートルスです。彼はもともと建築家ではありませんでしたが、この大阪造幣局の設立に技術者として参加しているうちに設計に関わることとなりました。

この時代各地に「お雇い外国人」と呼ばれる外国人技師が各地の施設建築に携わっていました。それと同時に彼等の生徒であり、彼等の弟子達が日本人建築家の走りとなる人たちとなりました。

この泉布観という建物名は明治5年、明治天皇がこの施設に行幸された際、「史記」の一節「貨幣の館」を意味する「泉布観」から命名されました。それ以来何度かこの施設は行在所として使用されました。ちなみにこの命名時、明治天皇はこの施設に三泊されました。そのことを知った市民は淀川でお祝の花火をあげるわ、この建物の庭で相撲や馬の曲乗りなどの余興で明治天皇を楽しませたそうです。

建物本体はトスカナ柱列のベランダで周囲を囲んだコロニアルスタイルというもので、この時代に建てられた建築によく見られるスタイルで、日本で言う洋館のお手本のようなものです。


  


その後は大正6年、大阪市に払い下げられました。橋のページの桜ノ宮橋でも挙げましたがこの前を通る国道1号線が開通したことによって、現在の造幣局とここが南北に分断される結果となり、この地は大阪市立実科女学校の敷地となり、音楽教室などの目的に使用されて来ました。

写真では少し分かりにくいですが、この敷地は手入れが行き届いているとはいえず、正直写真の構図にも苦労しました。(事実この写真を撮った場所は雑草がかなり生えていました)

この建物は、昭和31年、国の重要文化財に認定されているのですが、それを囲む敷地がこれでは何だか意気消沈してしまうのは私だけでしょうか。加えて、内部が公開されていない日は、ほとんど訪れる人もいません。(この日も20分ほどいましたがずっと私一人でした)明治天皇が訪れられ、この地で楽しい余興が行われていたとは、夢のような話です。

このままでは忘れられた文化財になる日はそう遠くないような気がします。

 


竣工
 明治4年2月(1871)、昭和39年(保存修理) 所在地 大阪市北区天満橋1-1-1

設計 Thomas James Waters  構造 煉瓦造2階建 

延床面積 1078平方メートル

※泉布観の内部公開は年一回、例年三月。

 


 

 

 


 
明治天皇記念館桜宮公会堂 (現 大阪市ユースアートギャラリー)

 

 

この建物は「旧造幣局鋳造所」の正面玄関(ウォートルス作)を昭和10年に移築したもので、このファサードは、竜山石造りで重厚な造りのものです。この移築は、国道1号線の完成により、造幣局が分断され、おまけに鋳造所が古くなったとされ、立て替えが迫られ、オフィスビルになることに決定したことにより、当時の文化人が立ち上がり、保存運動の結果、このような保存方法がとられることとなりました。この建物での保存は、歴史的建築物になりうる建物に歴史的建物の一部を移築するというドッキング方式の保存法です。

昨今でも歴史的建築物を「ファサード保存」という形で建物保存がなされていますが、それは建築にあまり興味のない役人や、その歴史的施設を保有する会社などが世論に負けて仕方なくやらされた感のあるやっつけ仕事的な保存法が多々見られます。ここに持ち主側の「ファサード部さえ残せば、世間も文句はないだろう」という意図が感じられます。なぜなら保存が叫ばれる名建築たちはファサード部だけが優れているという訳ではないですからね。

私は古い建物を見る度にその素材の贅沢さ、ひとつひとつの装飾の懲り様とその仕事の丁寧さに驚かされ、心が踊ります。もし潰されてしまうのなら、せめてそこに使われている建築資材の一部を払い下げてもらって、自分の家に使いたいなあと思ったりもします。いまではまず手に入らない高価な建築資材がふんだんに使用されているので。


歴史的建造物が共有財産だと考えると、複数の解体危機にさらされている建物があるのならそれらの特徴的な部分を集め、現在の建築家達にデザインしてもらった上で別の地に新しい施設を建築するというのも一つの保存法だと考えます。

この建物はそんなことを考えさせてくれます。

 


竣工
 明治4年(1871) 昭和10年(1935)[玄関部移築] 所在地 大阪市北区天満橋1-1

設計 Thomas James Waters(玄関部)/大阪市(本体)

構造 石造り(玄関部)  鉄筋鉄骨コンクリート2階建(本体)

 


 

 


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