1717年創立の下村呉服店から百貨店に業態変更し、今では京阪神の主要部も含め、全国各地に店鋪を構える大丸百貨店。このページでは、神戸、大阪、京都の京阪神基幹店の建物を観ていきたいと思います。
ちなみに大丸は伝統的に各店舗の名称を「〜てん」ではなく。「〜みせ」と読ませています。では「心斎橋みせ」から
心斎橋店
そごうの南隣にあるこの建物、アメリカンゴシックスタイルの大丸とモダンスタイルのそごうのデザイン相違のコントラストが長らく心斎橋のランドマークとなっています。2005年度中にはそごう心斎橋店は建物もリニューアルした上で再オープンするそうですが、どのような建物を建てるのかは今から楽しみであり不安でもあります。追記 そごう心斎橋本店が2005.9.7に再オープンしました。出来た建物はがっかりです。2005年9月吉日
村野籐吾のページでも書きましたが彼はこの大丸を意識してそごうをデザインしたといいます。その意識が模倣ではなく全く対照的なものを造ったというのがさすがモダンアーキテクチャー村野籐吾だということでしょうか。そもそも大丸は1717年に下村彦右衛門が京都の伏見に呉服店を開いたことが始まりで、その後、彦右衛門の弟、久右衛門が大阪に出店し、大正3年大阪店が本店に昇格しました。大正14年第一期工事でこの建物の心斎橋筋側が完成しました。
建物本体は滋賀で宣教師として来日していたW.M.ヴォーリス(1880-1964)の作品で全体的な意匠はネオゴシックスタイル、ファサードはアメリカンゴシックスタイルです。
この写真にある御堂筋側は昭和8年の地下鉄開通にあわせて増築されたものです。上部に写る5階より上の白壁部分は空襲で焼失したため、戦後になって完成当初の意匠を尊重する形で復興されたものです。
写真にはありませんが、内装が大変すばらしく、一階はアールデコな装飾が所狭しと飾り立てられています。特に1階エレベーター乗り場の装飾は必見です。

神戸店の本館は阪神大震災で多大な被害を受け、村野籐吾設計、昭和2年竣工の建物は新しく建て替えられたので、地震後も建物が残った別館を紹介したいと思います。この建物は元々はナショナルシティー・バンクの建物でした。
さすがにこの辺りは、旧外国人居留地だけあって、かつて外資系の企業が建てた西洋建築がいくつか残っていて、現在ではオーナーが変わりつつも建物はほぼ原形のまま残っています。この建物もそのうちの一つです。
建物本体はこれまたW.ヴォーリスの設計のものなのですが、関西学院大学に見られる軽快なスパニッシュミッションスタイルを彼の得意スタイルと考えると全体的には彼らしさがあまり感じられないものだと思います。
推測ですが、施主が銀行だっただけに当時の他の銀行建築にもみられるような威厳と迫力のあるものにして欲しいという意向があったようにも思います。
現在では大丸リブラブウエストという大丸神戸店の別館として使われています。店中には生活雑貨店「サザビー」「アフタヌーンティー」やフランスの服飾ブランド「アニエスb」のショップが入っています。これらのブランドの他のショップで買うのと少し違う気分になるのは私だけしょうか?
竣工 昭和4年(1929) 所在地 神戸市中央区明石町38(旧居留地38番地)設計 William Merrell Vories/ヴォーリス建築事務所 施工 竹中工務店 構造 鉄筋鉄骨コンクリート3階造
京都店
四条通沿いの抜群のロケーションにあるこの建物なのですが、W.ヴォーリス設計の旧館は、建物の端にわずかな部分だけ遺構のように残っています。京都市内は歴史的に見ても、近代に入って大きな自然災害もほとんど無く、先の大戦でも大規模な空襲を受けていない事から、歴史的建造物がほぼ無傷で残っているという特殊な土地柄であるのに、この建物の旧館は残っていません。
わざわざ歴史的建造物を解体した大丸の意図が分かりません。
その旧館の後に出来た現在の建物は無味無臭という表現がぴったりの建物です。唯一のチャームポイントは正面に掲げられた孔雀のオブジェです(下写真)
この旧館が残っていたのなら、神戸の物件は銀行だったものを大丸が引き取って店鋪にした事により、京阪神の店鋪がW.ヴォーリス建築で揃う事を記念して、京阪神の大丸を回る「大丸ヴォーリス建築ツアー」が可能になり、「スタンプラリー」なんか実施できたのにと大きなお世話を焼いてしまいますが、写真の建物東側に遺構が残っただけでも、無理矢理納得するしかありません。私はこのページを作成するにあたり、その「スタンプラリー」をいち早く達成しました。この四条河原町近辺は「阪急」「高島屋」「藤井大丸」「OPA」「BAL」といった百貨店、大型商業店鋪が狭いエリアに濫立していて、売り上げ競争が激しいだけに、店鋪のインパクト、買い物客に対するアイキャッチとして保存利用しておけば良かったのではと重ねて思います。
大丸京都店(遺構部) 竣工 昭和3年 所在地 京都市中京区四条高倉西入ル(東側壁面) 設計 William Merrell Vories/ヴォーリス建築事務所 施工 清水組
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